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山口家庭裁判所下関支部 昭和62年(家)535号 審判 1987年8月03日

申立人 福地直道 外5名

主文

申立人らの氏「福地」をいずれも「福池」と変更することを許可する。

理由

第1、申立の趣旨及び実情

1  申立の趣旨

各事件とも主文同旨

2  申立の実情(各事件につき共通)

申立人らの先祖は元々「福池」と称していたが、昭和7年6月1日佐賀市役所の火災により、申立人直道の父仙六を戸主とする戸籍が焼失し、これが再製された際、何らかの手違いにより「福地」と記載されたものであり、この際、先祖代々の氏に戸籍を直したい。

なお、申立人らは、いずれも公的には「福地」と称していたが、私的には「福池」と称していたものである。

第2、当裁判所の判断

1  家庭裁判所調査官○○○○作成の調査報告書及び本件各記録、関連記録によれば次の事実を認めることができる。

(1)  申立人直道は福地仙六の子、その父は福池良太郎、その父は福池良助であり、申立人直幸は申立人直道の子、申立人正二は福池仙次郎の子、同人は福地仙六の子であること、申立人喜三子は申立人直道の、申立人美代子は申立人直幸の、申立人奈美は申立人正二の各妻であること

(2)  申立人直道の祖父仙太郎については、同人を戸主「福池仙太郎」とし、前戸主「福池仙助」とする除籍の原本が存在していること、申立人直道の父仙六については同人を戸主「福地仙六」とし、前戸主「福地仙太郎」とする除籍の原本が存在するが、この除籍の記載によれば、昭和7年6月1日佐賀市役所の火災により焼失した戸籍を同年12月12日再製したものであること、申立人の父仙六は、昭和14年に佐賀市から下関市に転籍したものであること、申立人喜三子が申立人「福池直道」と婚姻したとする現戸籍も存在すること

(3)  申立人直道は、「福池直道」として昭和14年3月20日下関市立○○小学校を卒業したものとして、同校長から証明されていること、申立人方の昭和初頭以前に建立された墓碑銘には「福池家」と刻されていること

(4)  申立人直道は、「福池直道」と称していたが、昭和20年ころ就職するために戸籍を取り寄せ、「福地」と記載されていることに気付いたこと、そこで私的には「福池」と称し、公的には「福地」と称する二重生活をしてきたこと

(5)  申立人直道の兄仙次郎夫婦は、昭和62年1月29日申立人らと同趣旨の申立を当裁判所に認容され、既に戸籍上福池姓となっていること

2  以上の事実によれば、前記昭和7年12月12日戸籍再製の際、戸籍吏が「福池」を何らかの手違いにより「福地」と記載したものと認めるのが相当であり、本件各申立は、本来的には戸籍法113条によってなされるべきものと考えられる。

しかし、申立人らが戸籍法107条によって、氏名の変更をしようとするのであれば、その要件がある限り、これをあえて却下するまでもないと考える。

3  そうすると、本件各申立はいずれも正当であり、やむを得ない事由があると認められるから、これを認容することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 前原捷一郎)

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